灯火:(1)ともした明かり。とうか。ともし。
   (2)存在・実在などのあかしのたとえ。
三省堂提供「大辞林 第二版」より




たとえば灯火





言うなれば、英二は私にとっては『灯火』みたいな存在だ。
毎日、毎日屈託のない笑顔を見せてみんなを楽しませる。
そう、どんなときでも英二がいればぱっと明るくなる。
まるで闇の中に浮かぶ小さな灯火。
そんな彼は私の憧れだ。

さん・・・」
と、突然私の後ろの席の不二が声をかけてきた。
ちなみに今は休み時間だ。
「お?なんでしょう?」
「この前、英二のこと『灯火みたい』って言ったよね」
「うん。それが何?」
私は不二を睨んだ。
「いや・・・変わった人だなーと思って」
そう言うと不二はクスリと笑った。
「・・・・・・・・」
私は無言で不二を見つめた。
「別に変な意味じゃないんだけど」
「・・・・本当に?」
「本当に。」
「・・・・・・・」
「何か不満そうだね」
不二は私に「ホントは信じてないんでしょ?」と言う視線を向けた。
勿論、不二の言うことを信じられるわけ無い。
当たり前だ。うん。
「大抵の人は英二のことを『猫』って言うけど・・・
 どうしてさんは『灯火』なんて言ったの?」
私はその言葉にげっそりした。
いちばん聞きたくない言葉だからだ。
そう、私は英二のことを『灯火みたい』と、言った。
言ったと言うより呟いたと言った方が正しいかもしれない。
それでたまたまその言葉を聞いたのが、不二だ。
「そのまんま」
私は棒読みに近い言い方で答えた。

!不二!二人してなーに、はなしてんの!?」
噂をすれば影、話しの話題の張本人が現れた。
「英二には関係ないお話」
と、私が話を逸らす。
「あ、ひでー・・・・オレだけ蚊帳の外?」
「そう言う事ね」
「不二〜・・・・の奴、酷いと思わないか?」
「そうかな?」
不二は涼しい顔をしてさんだからと、付け加えた。
その科白に私は顔を少し引きつらせた。




どんなときも英二は私の灯りだった。
落ち込んだときや、悲しいときに英二は笑って「大丈夫」とか「気にするな」
って、さりげなく言ってくれた・・・・。
あんまり酷いときにはわざとドジをしたり、つまらないギャグを言ったり。
あの手この手で私を笑わそうとしたっけ?
私がちょっと笑ったら、英二、嬉しそうな顔をして
「やーっと笑った・・・、表情固すぎ!」
まるで子供みたいに笑っていった。






「英二ってさ・・・・」
昼休み、私は改まって英二を呼んだ。
「うにゃ?」
「明るいよね」
思った言葉を素直に述べる。
「いきなり・・どうしたんだ
 熱でもあるのかにゃ?」
英二は私の額に手を当て、熱を計る仕草をする。
「いやー・・・羨ましいなーと思って」
私は英二の手を払いのけて続けた。
「羨ましい?」
「うん。」
コクリと頷く。
どんな英二は私の素直な発言に少々驚いていた(当たり前だ)。
「なんて言うの?ムードメーカー・・・うん。
 英二がいるだけで周りが明るくなるよね」
私はさらに続ける。
「闇の中に浮かぶ小さな火。そんな感じ」
「・・・・・・
「ん?」
「よく、恥ずかしい科白を言えるにゃ・・・」
「あらそう?」
そう言うと英二はうん、と頷いた。
「でもさー・・・
「なに?」
「オレがムードメーカーなら、はリーダーだよね」
「はっ?」
英二の発言に私は呆気にとられる。
「だって、オレに部やクラスまとめろって言っても無理じゃん。
 でもさ、はクラスまとめるのを軽々やってる。
 それは、オレにはゼッタイできないことだよ」
英二ははにかんだ笑いをして、私を見た。
英二にあんな事言われるなんてなんだか恥ずかしい・・・。
「でもさー・・・やっぱり英二のこと、羨ましいよ」
そう、羨ましい。
闇の中の灯火はみんなの希望で。
闇の中の灯火は誰にでも好かれる。
そんな彼が羨ましくて、そして好き。

「英二」
「ん?」
「だいすき!」
「え!?、それどういう意味?」
「えへへー・・・秘密」






END




あとがき


えっと、ヒロインの言いたかったことがいまいち分からない方へ。
ヒロインが言いたかったことは『飛んで火にいる夏の虫』です(ぇ
意味がちょっと違うのですが。
結局、暗闇の中にいたら光を求めますよね・・・普通。
その光が菊ちゃんなのですよ。

恋愛要素が全く無しです。この話。
・・・・すみません!





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