生徒会長5


文化祭まであと3日となり、学校内もお祭り騒ぎに浮かれる雰囲気と、
当日までに間に合わせるために必死に作業をしているピリピリした雰囲気が入り交じった不思議な雰囲気になっていた。
私はこの雰囲気が嫌いではなかった。
氷帝の生徒が一致団結して、同じ目標を遂げるために協力する姿はきっと良い想い出にも良い経験にもなると思う。

!」
と、そんな物思いに耽っている余裕もなく私には次々と仕事が舞い込んでくる。
忙しくしている理由の一つは、演劇部だ。
結局あの事件の後、みんなと話し合って演劇をすることになった。
『演劇』とは言うものの演劇をするはずだった第一体育館が使えなくなってしまったので
外で短い演劇をやらせてもらえることになった。
とは言うものの、あと3日で準備しろと言うのもなんだか無理なような気もするけど……。
そんなわけで演劇部は大忙しだったりする。
「そこの照明持ってきて」
顧問の先生の大きな声が響く。
私は2、3歩先にある黒い照明を持つ。
壊さないようにゆっくりと先生の所に持っていく。
「は、先生」
「すまないな」
そういって、先生は延長コードに照明のコンセントを差し込む。
私は時間が気になって、自分の腕時計を4時半を指していた。
「……げっ」
思わず声が出る。
「どうしたのちゃん?」
先生の手伝いをしていた、同じ演劇部の子が私の顔を覗いてくる。
「あはは……実は四時半から委員会の仕事があって」
つまり、私は仕事をすっかり忘れていたのだ。
申し訳ないと思いつつも委員の仕事は最優先に回される。
私はごめんと、一言謝ってその場を後にした。



最終調整のために今度の委員会は生徒会室で集まることになっていた。
「すみません、遅れましたー」
と、生徒会室のドアを開けると広々とした室内が見えた。
そこには文化祭の関係者の面々が集まっていて、一気に私に視線が集まるのが分かった。
「おせーんだよ、
と、最初に口を開いたのは天敵跡部だった。
あのキス事件以来、どう顔を合わせたらいいか分からなかった私だけれど
あいつは普通に接している。
その余裕がむかつくんだけど……。
「わるかったわね。部活のことで遅れたんです!」
ふんっと鼻を鳴らして、空いた席に座る。
「全員集まったことですし、これから関係者による当日の打ち合わせを行います」
と、この委員会の司会の子がナイスタイミングで間に入ってきてくれた。
会議の大まかな内容は当日の役割の確認であった。
文化祭という一大イベントの運営の中心はほぼ文化委員が担っていた。
運営、管理は8割が文化委員、2割が生徒会が負担していた。
だから少なからず委員と生徒会は連帯して文化祭を運営しなければならなかった。
そのための最終調整だった。
「では、案内役のオーダー表を渡すので各自で確認しておいて下さい」
と、みんなに一枚ずつ紙が渡される
一番上には『オーダー表』とかかれていて、下を見ると表が大きく載っている。
表の中には時間とそして名前が書かれていた。もちろん、私の名前も書かれていた。
案内役とは……まぁ、読んで字の如く案内役であって。
マンモス校でやたらでかい氷帝を案内するというのが主な仕事の内容だ。
迷子引受人とも言われているけれど……。実際そうなので反論できない。
私の時間帯は午後の2時〜3時半までとなっていた。
1時間半か……ちょっとキツイかもしれないけど、なんとかなるかな?
とそんなことを思いつつ、会はどんどん進行していった。

「最後に何か質問はありませんか?」
と、司会の子が最後のまとめを執り行う。
「―――……ありませんね。では、今日の委員会は終わりです。
 皆さんお疲れさまでした」
その言葉を合図に一斉に皆が立ち上がる。
私も立ち上がって出口へ向かおうとした。
けれどそれは天敵跡部によって阻止されてしまった。
「な、何よ……」
思わず身構える。
私の目の前にいかにも偉そうに跡部が立ちはだかる。
「話したいことがあるから、ちょっと待てよ」
と、命令口調で言われる。
正直むかつくけど、我慢、ガマン。
3分もすれば会議室は私と跡部の二人だけになり、静かになった。
「で?話しって?」
まさか愛の告白!?と思ったが、跡部なら確実にありえないので却下。
「お前、舞台で起こったこと、覚えてるか?」
「え?舞台って――」
サッと、血の気が引くのが分かった。
「無理に思い出さなくても良い……。
 照明が落ちてきたことについて色々調べた」
「……それで?」
嫌な予感がした。
「事故の可能性があるかもしれねえ……」
予感は的中した。
どう、答えて良いか分からない……。
「何で私に言うの……?」
「お前が被害者だからだ」
「じゃあ、もう一人いるじゃん……。あの子には言ったの?」
「いや、まだだ」
「じゃあ、言わなきゃ……」
下手をしたら、あの子も私も死んでいたかもしれない。
そう思うと震えが止まらなくなりそうだった。
「お前はどうしたい?このまま事故で終わらせるか?それとも事件にするか?
 俺はそれを訊くためにここに残したんだよ」
このまま事故で終わらせるか……事件として真相を探るか。
「――………」
「答えはすぐ出さなくて良い……」
「ううん、今だす。このまま事故として処理して」
跡部の方眉があがる。
「お前はそれでいいのか?」
「うん。今だって演劇部は大変なのに、もっと大変にしたくないし……
 それに証拠がないんじゃないの?」
私のセリフに跡部は無言になる。
それは肯定を意味していた。
「ほらね。証拠もないのに騒ぎ立てて文化祭も台無しにしたくないし……」
「お前がそれで良いなら、好きにしろ」
「うん。そうする」
これで本番は何事もなくすすめばいいのだけれど……。
「本番、上手くいくといいね」
「ああ……」
その時の私は、ただただ祈ることしかできなかった。




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跡部氏動きましたね・・・。
おいらビックリ。
って、私が驚いてどうするよ・・・。


感想があれば送って下さい。


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