生徒会長3


授業を終えた放課後、いつものように私は文化祭の準備に追われていた。
そこに、例の如く現れたのが天敵跡部であった。
でも、もう慣れてしまったので今は無視。

「あれー?跡部くん、香水変えた?」
そう跡部に声を掛けたのは作業を手伝ってくれていた、女子の一人だった。
私もなんとなく跡部の反応が気になって跡部を見る。
「気のせいじゃねぇの」
跡部が間髪入れずに答える。
「そうかなー?うーん・・・私の気のせい?」
ほっぺに手を当てて首をひねる。
跡部は彼女を無視して、すたすたと私に近づいてくる。
私に近づいてくるので、私は戦闘態勢にはいる。
「な、何よ・・・」
「演劇部、呼んでたぜ」
「・・・・・・」
「なんだよ」
「あんた、演劇部と繋がりなんて無いでしょ?」
そう、あ・の!跡部様が演劇部と関わりがあるはずがないのだ!
「あ? オレがお前に用があるって言ったら、部のヤツに言われたんだよ」
ん?なにかおかしい・・・。
ふと、胸につっかえができたような気がした。
でも、それは本の小さなものだったので、すぐそのつっかえは、部活の事へとすり替えられた。









事件とは、忘れた頃にやってくる。


――とはよく言うもので。
本当に今は「呆然」という言葉がよく似合う。

なにが起こったか、頭の中では理解できないでいた。
周りのざわめきが、音としてとらえられず、瞬きさえも忘れていた。
女子生徒が悲鳴を上げる声も、男子生徒が先生を呼びに行く姿も、どこか他人事のように思えた。


それは、演劇部のリハ中に起こった。
文化祭まで残りの日数が少なくなってきたので、リハといえども気が引けなくなってきている。
そのため、照明役の私は役の人たちと最終の確認を行っているところだった。
ところが、打ち合わせをしている途中にミシッと言う嫌な音とともに、私の目と鼻の先をなにかが通り過ぎた。
そしてその物体が通りすぐてまもなく、さらに大きな物体がとてつもない大きな音と供に、落下した。
辺りが、シンッと静まり返った。
そしてすぐさま、女子の悲鳴。そしてざわめき。
私と、そして確認の行っていた子と、二人してなにがなんだか分からずにいた。
ふと、下を見てみると、ぐしゃぐしゃになった照明が、辺りにいろとりどりのガラスをまき散らしながら横たわっていた。
すぐにはそれが理解できずにいたが、思考がだんだんはっきりしてくるにつれ、いったいなにが起きたのか、
どんな状況なのかが分かってきた。

そして、全てを把握したときに、私はぞっとした。
「――――」
体中が震えた。
あと一歩右にずれていたら、私はただではすんでいなかっただろう・・・。
もしかしたら、照明と一緒にぺちゃんこだったかもしれない。
そう思うと、一気に恐怖が込み上げて立っていられなくなった。

ぺたんと、膝をつき、私は気が遠くなっていくのを感じていた。
(――まだ、仕事が・・・)
薄れる意識の中、恐怖とは別に文化祭のことが頭に浮かんだ。
そして、誰かが私の名前を呼んでいた。




西日があまりにも眩しかったので、私は否応なしに目が覚めた。
「・・・・・・?」
ここは?
そう思ったと同時に、薬品の独特の臭いが鼻をかすめる。
ゆっくりと起きあがってみるとどうやら、保健室のようだった。
見慣れた真っ白の壁とカーテンに少し安心する。
(保健室だ・・・)
多分、ここが知らない場所だったら私はきっと混乱するだろう。
「目が覚めた?」
急に横から声をかけられて、私は少し驚く。
すぐに振り向いてみると、演劇部の子が椅子に座っていた。
心配そうな顔をして、私に話しかけてくる。
「大丈夫?私のこと分かるよね?」
私は頷いて、返事に代える。
「ねぇ、どうして私、ここにいるのか教えてくれる?」
どうしても記憶が飛んで、混乱している部分がある。
「うん。――・・・あのね、ちゃん、リハのことは覚えてる?」
「うん。最終の打ち合わせをしてて、それで・・・」
「うん。それで、照明が落ちてきたのは覚えてる?」
そう言われて、あの轟音がよみがえってくる。
血の気が引いてくるのが自分でも分かった。
ちゃん、大丈夫!?」
私の異変に気がついたのか、すぐに声をかけてくる。
「・・・大丈夫だから。――で、どうして私ここに・・・?」
ちゃん、その後すぐに倒れて・・・」
「うん・・・。」
「で、跡部くんがすぐに現れて、ちゃんをここまで連れてきたんだよ」
・・・ちょっと待って。
「いま、跡部って言った?」
私の問いかけに素直に頷く。
「そう。ありがとう」
「ごめんね。私なにもできなくて」
何もでき無いというのは、当たり前だとおもう。
もし私が彼女の立場だった、きっとなにもできない。
私は首を左右に振って、気にして無いという意志を示した。
「私の方こそ、ごめんね。――・・・それから」
「?」
もう一つ気になることがあった。
「演劇部、どうなった?」
それよりも文化祭ができるのか不安で仕方がなかった。
そう言うと、彼女は情けなさそうに首を左右に振って、こういった。
「まだ分からないの・・・。どうして照明がどうして落ちてきたかも分からなくて」
そりゃそうだ。だって、そんなのすぐに分かるわけない。
「部長も、今年の文化祭は無理かもって」
「――・・・そう」

悔しさが何故か込み上げて、同時に涙が溢れてきた。
「ごめん、ね。時間取らせて。私が目覚めたこと、先生に伝えてきて」
なんとか、平静を装って、演劇部の子に保健室を出ていってもらうように言った。
彼女は、なにも気づくことが無く、保健室を飛び出していった。


彼女がいなくなってすぐに、私は泣いた。
正確には、涙をこぼした。
「・・・っ・・・」
悔しかった。
なにが、と言われると困ったけれど、とにかく悔しかった。
演劇部の劇ができなることや、情けない自分に――。
私が、静かに泣いているとガラッという、乱暴な音と共に誰かが入ってきた。
必死に泣きやもうとしたが、無理だった。
そしてカーテン越しに人が近づいてくるのが分かった。





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す、すみません!!(土下座
ドラマはあった(はず)けど、跡部氏動いてないよ?
つ、次は動くはず・・・。必ずや!






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