「お前、俺と居るのが辛いのか?」
彼は至極真剣な顔つきで、私を見ていた。




香水





ごく最近になって分かった事だが。
は跡部と居るとき、すごく嫌そう・・・と言うよりも
眉間に顔を寄せて何かを我慢しているようだった。
それが何か分からないが、跡部はその「何か」が知りたくて苛ついていた。
それを本人に聞けば早いが、聞けば絶対
「気にしないでください」と笑顔で言うに違いない。


は跡部の彼女だ。
彼女、と言うよりも許嫁に近かった。
それも、許嫁と分かったのはつい最近であるが、
その辺の話しをすると長くなるのであえて省こう。

は誰から見ても「守ってやりたい」と思わせるオーラを持っていた。
それは男女を問わなかったが、一部例外も居た。
跡部の彼女と言うことで、は何度か酷いイジメを受けていたが、
そのイジメが跡部にばれて、最後には跡部に眼をつけられ、ほぼさん殺しに近い仕返しをしていた。
そのことが良かったのか、ここ最近ではがイジメにあったような形跡もなかった。

しかし今、跡部は非常に悩んでいた。
これを同じ部の向日岳人という男や、忍足侑士という男が聞けば
「ありえねー」とか「熱でもあるんとちゃうん?」とか「跡部じゃねー」
など、好き勝手に言われるに違いなかった。
だから外には漏らそうとも思わなかったし、漏らしたくなかった。
もらす、と言うより相談と言う言葉が適当かもしれないが・・・・。

今日も、跡部とは(毎日の日課で)一緒に帰っていた。
家が近所だと言うことと、彼氏彼女の関係と言うことと、それにこんな夜遅くに
女の子一人で帰らせたら何が起こるか分からないと言う理由で、一緒に帰っていた。
しかし、跡部はすこぶる機嫌が悪かった。
やっぱりはどこか何かが嫌そうにして居たし、その理由が知りたい。

もどかし。
こう言うときにこんな言葉を使うのだろうと思った。
彼女の気持ちが知りたくて、今何を考えているのか知りたくてもどかしい。
訊いても否定されるのが嫌だった。
否定されれば自分は何をやらかすか分かったモノじゃないから。

けれど跡部は決心をした。

彼女の胸の内を聞くために。


「おい」
の自宅まで、後数分と言うところで跡部はに声を掛けた。
「はい?」
「お前、俺と居るのがそんなに嫌か?」
「え・・・・?」
「何時も俺が側に居ると嫌そうな顔をしてるじゃねえか」
「・・・・・・そうですか?」
のあまりにもとぼけた返答に跡部は苛ついた。
「とぼけるな。そんなに俺と居るのが嫌ならこのまま別れるか?」
勿論、別れる気は毛頭ないが。
「・・・・・嫌です・・・・別れるなんて」
「じゃあ、答えてもらわねえとな」
「・・・・・・分かりました」
は諦めたようにため息をついて、跡部を見た。
「跡部先輩、香水つけていますよね?」
「ああ。それがどうか――・・・・もしかしてそれが嫌なのか?」
「はい。ずっと言おうと思っていたんですけど・・・」
は、香水などが苦手だった。
それが跡部と居るときに、嫌そうな顔をしている理由だった。
「どうも、香水が駄目なんです。でも、そんなこと跡部先輩に言ったら
 ガキっぽいって言われそうで・・・・。だからずっと我慢していたです」
跡部は、内心ホッとし、そして呆れていた。
自分がこんな事に頭を悩ませ居ていたなんて・・・・。
そしてこんな理由で良かったと。
「バーカ。オレ様を誰だと思ってるんだ?」
跡部は意味ありげな笑いを見せて言った。








fin




あとがき


えー・・・私も香水駄目です。
臭うだけで気持ち悪くなります。
ほら、百合の花が臭いのと同じですよ。
え?ちがう?


感想があれば・・・。
誤字脱字もあれば教えて下さい。

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