「仮面なんか付けて、苦しくない?」











disguise








その言葉に跡部は顔をしかめた。
「何言ってンだ、お前・・・・」
そして、こう一言呟いた。


始まりは昼休みだった。
跡部は教室にいた。
何をすることもなく、本を読んでいたのだ。
そこへ一人の女が跡部に近づいてきた。
「跡部くん」
自分の名前を呼ばれ、跡部はゆっくりと本から呼ばれた方へ視線を変えた。


目の前にいたのは、だった。
彼女は跡部と同じクラス。
勉強の方は上の下。
これと言って、目立ったわけではなかった。
ただには人を見ると言う観点では優れていた。
つまり、人の性格や嘘、お世辞などほとんど分かってしまうのである。
彼女曰く、周りの空気つまり雰囲気で分かってしまうらしい。
そんな彼女が跡部に話しかけてきたのである。

それが始まりだった。
そしていまに至る。



「なにって・・・今言ったとおりだけど」
「頭いかれてんじゃねえのか?」
容赦ない攻撃。
「大体、仮面ってなんだよ?」
不機嫌な顔で跡部が聞いてくる。
「そのままの意味」
「アーン?」
跡部はさらに不機嫌になる。
意味が分からないからだ。
「だから・・・要は、どうして『本当の自分』を出さないのかって
 言っているんだよ」
「弱味を見せろって?」
「うーん・・・そう言う意味じゃないんだけど・・・・」
は苦笑した。
「どうして仮面を被ったように、本当の姿・・・
 つまり跡部くんの1部だけでも見せようとしないの?」
そう言ったとたん予鈴がなった。
「もう時間だわ・・・。それじゃあ」
「あ、ああ」
嵐のような女だな・・・。
跡部はそう思った。







あの後から跡部はの言葉が頭から離れなかった。
『仮面なんて付けて、苦しくない?』
その言葉が頭の中でリピートされる。
「仮面、か・・・・」
口に出した後、苦笑する。
確かに自分は仮面を付けている。
なぜって?それは親からずっと言われてきていたことだから。
『お前は決して人に弱味を見せてはいけない』
呪いのように・・・まるで呪うかのように言われてきたことだ。
だから『自分』を隠してきたのだ・・・。
だから周りも『本当の自分』があることに気がついていない・・・。
という存在を抜けば・・・・。
「まったく勘の鋭い女だぜ」
跡部は心底そう思った。



「跡部くんだ・・・」
は珍しいと言った口調で跡部に話した。

ここは中庭の一角。
今は3時限目の授業の真っ最中。
つまりはサボっていたのである。
そこへ跡部がやってきた・・・。
にとって、跡部がサボると言うことは珍しかったのであろう・・・。

「何、物珍しそうに見てるんだよ・・・・」
「え・・・・・だって、あの跡部くんがサボるなんて珍しい・・・・」
その言葉を聞いて跡部はどういう意味だ?と言いたそうな表情をする。
「どういう意味かって?」
「・・・・・・・・・・・・・」
無言でをにらみつける。
「だって、跡部家の跡取りで成績優秀。スポーツ万能。
 まるで非の付け所のないひとだもん」
「あ、でも」っと、は何か思いだしたように続けた。
「女遊びが酷いところは玉に傷かな?」
クスクス可笑しそうには笑った。
跡部の方は「けっ」っと悪態をついた。
「・・・・・・・だからこそ・・・・」
「あ?」
はフッと悲しそうな表情をして下に俯いた。
「跡部くんは弱味を見せちゃいけないんだよね・・・・。
 跡部家の跡取りだから・・・・・」
は今にも泣きそうな表情をした。
しかし、跡部には訳が分からなかった。
何故自分と関係ない人物がここまでするのかと・・・。
自分なら無視をするのに・・・。
「跡取りって言うことだけで完璧じゃなきゃいけなかったのかな・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・」
跡部は何が言いたいのかサッパリだった。
「何が言いたいか分からない?」
「ああ・・・・」
「だろうね・・・・ごめん。迷惑掛けたね」
そう言い終わらない内にはどこかに駆けだしていった。
「なんだよ・・・・あいつ・・・・」
















「跡部・・・怖い顔してどしたん?」
忍足が何か興味深そうに話しかけてきた。
「なんでもねーよ」
跡部は「じゃまだ」と言いたそうなオーラを全面的に出していた。
その空気を感じとってか忍足は
「おーこわ」
と言って部活に専念しに行った。
跡部は忍足の後ろ姿を一睨みすると、自分の作業に専念した。

その後ろ姿をは寂しそうに見つめていた。
フェンスから大分離れたところから・・・・・・・・・。



















あれから1週間ほど経った。
跡部は外見上は今まで通りに振る舞った。
だからほとんどに人は跡部の様子が変だとは感じていなかった・・・。
とはほとんど接触しなかった。
例え接触したとしてもあの話しには一切触れなかった。
今まで通り、何もなかったようにしよう。
あのことは忘れよう。
跡部はそう誓った。


2限目、跡部はサボった。
これと言った理由はなかったけれど、とにかくサボりたかったのだ。
だから屋上へ行った。
そして、空を見上げた。
「うわぁー・・・跡部くんが物思いにふけってる」
突然後ろから声がして、反射的に振り向く。
そこには
「やっほー」
と言いながら、手を振るが居た。
貯水タンクの上に座っているのだ。
「おまえ・・・・何でここに」
「いや、ずっと前からここにいたけど」
ニコニコしながら言った。
「この前、何であんな事言ったんだよ?」
「・・・・・・・・・・・・」
の明るい表情が一転、暗い表情へと変わる。
「跡部くん、無理をしてるから・・・」
「無理何かしてねえよ。それに、大きなお世話だ」
「だろうね・・・」
そう言って苦笑いする。
「でもね・・・何であそこまで無理をするの?」
「お前には関係ない」
「・・・・・・このままじゃ跡部くん・・・・跡部くん、とっても辛そうだよ?」
「・・・・・・・・・・」
跡部は無言のままを見た。
「テニスをしているときのように、跡部くんの『素顔』を見せてよ・・」

さぁーっと、風が二人を包んだ。

跡部は無表情だった・・・けれど・・・・?
「お前にはかなわねぇな、
フッ笑ってみせる跡部。
その表情を不思議そうには見る。
しかし、も明るい笑顔になった。
「やっと、名前を呼んでくれたね」
「・・・・まったく、よく、俺の本性に気がついたな?」
「私をなめないでよね。今も仮面被ってるでしょ?」
「そう簡単に外れるモンじゃねえよ」
「本性じゃなくて、素顔な気がする・・・」
「どっちも同じだよ」
周りの空気が穏やかになった。

「俺が唯一素顔を見せるときがよく分かったな」
「うん」
ちょっと辛そうに笑う。
「跡部くんのことが好きだから、よけいに分かっちゃうんだろうね」
「・・・・・・」
「跡部くん見てたら、自分のことのように辛くなっちゃって・・・。
 ごめんね、お節介で」
「・・・・・・・・・」
しばし無言が続く。
「たくっ・・・お前にはかなわねえな・・・」
「へ?」
「付き合ってやるっていってんだよ」









END






跡部氏じゃないわ・・・。
こんなの跡部氏じゃない・・・。
ごめんなさい、跡部が偽物で。

何か感想があれば・・・。
メールアドレスがあれば、返信メールついてきます。


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